冨所龍人

Topics

私の場合、なぜ写実か?

13〜14歳の頃から、古典絵画やシュルレアリスムに憧れていました。
学校の図書室で、シュルレアリスム絵画の画集をワクワクしながら見ていたことを思い出します。人の心の奥というか、なんだか「見てはいけないもの」を見てしまったような気分でした。
大学生の頃はポールデルボーやバルテュスに傾倒し、自分の絵の中に象徴的に何かを暗示するようなものを描き入れたりしていました。それはどんどんエスカレートして、そのうちにモチーフ無しで、頭の中に浮かんだアイディアのみで絵作りをするようになっていました。
その傾向は30代半ばまで続いていましたが、とうとう行き詰まってしまい、絵を描くことが苦痛になり疲れてしまったのです。
そのせいで白日会への出品を2回ほどお休みしてしまったことがあります。

ある日卓上に静物を並べ、実際に物を見て描いた時、とても新鮮な感じがしました。
それまで苦しかった制作が急に楽しく描くことができ、目の前が明るくなったような感じがしたことを今も憶えています。
自分と外の世界(モチーフ)との無言のキャッチボールが、絵を描くにあたり「根本的に大切なこと」を感じさせてくれたのだと思っています。

私の場合、そういう経緯で今の写実のスタイルに流れ着きました。

 

| 2013.04.02 |

Archives